進捗日記

うまくいくかどうかは関係ない。何事も経験だ。好きな言葉は「ダメもと」です。

📙とあるお父さんと、とあるお母さんとの交換日記。「さびしさについて」植本一子 滝口悠生

 

 

以前から植本一子さんの日記はよく読んでいました。

前作の「愛は時間がかかる」も読みましたが、

それまでの日記形式の著作とは趣を異にしていて、

なんとなく読んでてピンとこなかった覚えがあります。

この日記ではそのことについても触れられていて、

以前とは違う形式で書いたという記述があったので、

読み違いでなくてよかったなと思った次第でございます(ほっ)。

 

この本は写真家である植本さんと、

小説家の滝口悠生さんというかたの

往復書簡という形をとっています。

おふたりは実生活でも行き来していて仲がいいそうなのですが、

それぞれお子さんがいらっしゃって、

子育て中のとあるお父さんととあるお母さんが

交換日記を書くというシチュエーションが

まずおもしろいなと思いました。

 

あたりまえと言えばあたりまえなのかもしれないけど、

小説家のかたにも、

写真家のかたにも日常生活がある。

変な言いかたかもしれませんが、

みんなそうやって生きているんだなー、と

あらためて感じます。

 

あと、滝口さんのお子さんに対するものの考えかたが

なんとなく「お母さん」っぽいなと感じました。

日ごろ、お子さんの面倒を

こまめに見ていらっしゃるからなのかもしれません。

あと、家事などを奥さんがやると

自分とやり方が違うところにモヤッとするようなことも書かれていて、

これもどこか主婦っぽくて興味深く感じました。

この辺は、もしかしたらジェンダー的なものというより、

役割において性格づけられるものなのかもしれません。

 

かたや、植本さんはこの往復書簡を書いている間に

パートナーのかたとの関係を解消するのですが、

そんなことまで公にしてしまう潔さというか、

そのくらいの心持ちがないと

日記を出版することは難しいのかな、とも思いました。

でも、そのいっぽうで、ご本人が過去の著作を読み返し、

「あー、この人、必要に迫られて一生懸命書いたんだなあ」と述懐されていて、

そんなふうに思う気持ちはなんとなくわかるような気がしました。

 

おふたりとも子育て中ということで、

やはり育児に関する記述が多いのですが、

読みながら私もたびたび思い出すことがあり、

自分が子育てをしていたときは

あのころはああだったな、このころはこうだったな、と

ふりかえりながら読みました。

 

そうそう、以前の記事で中園孔二さんのことを書きましたが、

中園さんのことを知るきっかけがこの本でした。

植本さんがある日の日記で中園さんのことにふれていたのです。

すっかり忘れてました(ごめんなさい)。

そしてこの本の解説をお書きになっているのも

中園さんの師匠であるO JUN さんでした。

この本を読んだことで中園さんと出会えたのでよかったです。

 


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いろいろと得ることの多い本でした。