進捗日記

うまくいくかどうかは関係ない。何事も経験だ。好きな言葉は「ダメもと」です。

📙しばらくは中園さんのことばかり考えていました。『穏やかなゴースト 画家・中園孔二を追って』村岡俊也

 

 

中園孔二さんという画家のことを

どうやって知ったのか、

そのきっかけについてはまったく覚えていないのですが、

知れば知るほど知りたくなるというか、

とても魅力的な人物であることが分かりました。

 

たとえば、バスケットボールに夢中だった高校生の中園さんが

ある日突然絵を描いて生きていくと宣言し、

二階の自宅の部屋から階段、玄関にかけて

昼夜を問わず

壁や天井を絵や創作物で埋め尽くしていったというエピソードも

驚きでしたし、

芸大に入学してからも、まわりの人に与えた影響は計り知れなく、

教授をして「天才が現れた」と言わしめるほどの才能もすごいと思いました。

でも、なにより衝撃的だったのは、

そんな中園さんが25歳という若さですでに亡くなっていたことでした。

 

そんな中、この本が出版されていることを知り、

早速取り寄せて読みました。

 

 

読み進めていくうちに、

中園さんにはもともと絵の素養があったこと、

わざと危険にさらされるようなことをして、

はらはらするのが好きらしかったこと、

まわりの人がみんな中園さんのことを好きになってしまうような

好青年だったことなど、

本当に魅力的な人だったのではないかと察しました。

 

You Tube でも、中園さんのインタビューがいくつか載っていて、

見ることができるのですが、

その中で

「自分を表現できるのであれば、

それは別に絵じゃなくてもよかった。

自分の場合はそれがたまたま絵だった」というようなことをおっしゃっていて、

それはなんとなく分かるような気がしました。

 

そんな傑出した才能を持つ中園さんですが、

絵を描き始めるとほかのことができなくなってしまうという一面がありました。

あと、ひとりきりでこもって絵を描きたいという欲求があっても

なかなかかそれがなわなくて

お困りになっているような場面もありました。

絵の世界のことはよく分かりませんが、

どなたかがマネジメントしてくださる環境があれば、

絵にもっと集中できただろうな、と思いました。

このあたりはなんかちょっともったいない感じがしました。

 

中園さんはその後高松でひとり暮らしを始めるのですが、

そんなある夜、夜の海に泳ぎに行って

そのまま帰らぬ人になってしまいます。

 

ここからは完全に私の想像ですが、

もしかしたら中園さんは、

夜の海の中で

とてつもなく美しいものに出会ってしまったのではないか。

そして息を止めてその美しさに見とれたまま

天に召されてしまったのではないか。

そんな気がしてなりません。

そして、中園さんという人物を知ってから、

私自身、死というものがすこしだけ

身近であたたかいものに感じられるようになった気がします。

 

また、中園さんは別のインタビューで

「ひとり暮らしはさびしいけど、そのさびしさもまたいい」

というようなことをおっしゃっていて、

それを聞いたとき、ふと、

エミリー・ディキンソンさんという詩人のことを思い出しました。

エミリーさんは人生の大半を一人でひっそりと生きていらしたそうで、

いったいどんな心持ちだったのだろうと思っていたのですが、

ご自身曰く、

 

「わたしに幸せなことがあります。

わたしがわたしであって

ほかの誰でもないことです」

 

とおっしゃっていたそうで、

はたからどう見えようと、

その人のことはその人自身にしか分からないし、

その人自身にも分からないことがあるかもしれない。

そんなことを感じました。

 

なんだかうまくまとまらなくてごめんなさい。

 


f:id:happy_go_lucky_yuu:20240410155940j:image

しみじみ読んでよかったと思える本です。

そしてつい最近、中園さんの絵が展示されるという情報を得ました(つづく)。